【ソフトバンク】2026年3月期 第3四半期 決算説明会
ソフトバンクは2026年2月9日、2026年3月期(2025年度)第3四半期の決算説明会を開催しました。本レポートでは、過去最高となった連結業績、モバイル事業における戦略的転換、およびAI・通信インフラに関する新たな取り組みについて詳報します。

連結業績:全セグメント増収で過去最高を更新
ソフトバンクが発表した第3四半期累計(2025年4月〜12月)の連結業績は、売上高が前年同期比8%増の5兆1954億円、営業利益は同8%増の8841億円、純利益は同11%増の4855億円となり、売上高・各利益ともに過去最高を記録しました。
セグメント別では、メディア・EC事業を除くすべてのセグメントで増益を達成しました。特にPayPayを中心とするファイナンス事業が営業利益660億円(前年同期比倍増)と大きく伸長し、全体の成長を牽引しました。メディア・EC事業については、連結子会社であるアスクルがランサムウェア攻撃を受けた影響で約200億円の減益要因が発生し、セグメント全体では2%の減益となりましたが、グループ全体の好調さがこれをカバーしました。
これらの進捗を受け、同社は通期の業績予想を上方修正しました。売上高を6兆9500億円(当初予想比+2500億円)、営業利益を1兆200億円(同+200億円)、純利益を5430億円(同+30億円)へと引き上げ、過去最高益の更新に向けて順調な推移を見せています。

コンシューマ事業:契約数至上主義からの転換
本決算における最大のトピックの一つは、モバイル事業における「契約者数の純減」と、それに伴う戦略の転換です。
スマートフォンの契約数は3196万件と前年同期比で2%増加していますが、直近3ヶ月(第3四半期単独)では10万件の純減となりました。宮川潤一社長兼CEOはこれを「我が社始まって以来の歴史的な出来事かもしれない」としつつ、「意志を持って取り組んだ結果である」と説明しました。
背景には、キャッシュバック等の特典を目当てに短期間でキャリアを乗り換える「ホッピングユーザー」の存在があります。宮川氏は、こうした短期解約ユーザーの獲得競争に資金を投じることは「サステナブルな経営とは言えない」と断言しました。同社は昨年9月から、短期解約の可能性が高いユーザーの獲得を抑制する構造改革を実施しており、その結果として見かけ上の契約数が減少しました。
この戦略変更により、獲得コストの適正化と長期利用ユーザーへの還元強化を図ります。宮川氏は「純増数にはこだわらない」とし、解約率の低減とARPU(1ユーザーあたりの平均売上)の向上による「増収増益」を重視する方針を明確にしました。実際、Y!mobileからソフトバンクブランドへの移行などが進み、ARPUは上昇傾向にあります。
新規事業とインフラ戦略:AIと光回線での一手
次世代社会インフラの構築に向けた具体的な進捗も発表されました。
1. AI計算基盤「Infrinia AI Cloud OS」の開発 AIデータセンター事業において、GPUリソースを効率的に管理・提供するためのソフトウェア「Infrinia(インフリニア) AI Cloud OS」を開発したことが発表されました。従来、GPUサーバーの構築(ベアメタル)には専門知識と数週間〜数ヶ月の期間が必要でしたが、本システムによりクラウドサービスとして柔軟かつ迅速に計算基盤を利用可能になります。 宮川氏は、従来の「学習」用需要に加え、今後はAIエージェントやフィジカルAIなどの「推論」需要が急増すると予測しており、Infriniaを通じてこれらの需要を取り込み、国内発のソブリンクラウド(データ主権を確保したクラウド)の構築を目指すとしています。

2. ソニーネットワークコミュニケーションズとの合弁会社設立 固定通信分野では、ソニーネットワークコミュニケーションズと合弁会社を設立し、光回線のアクセス設備を共同で保有・運用することを発表しました。ソフトバンクが51%、ソニー側が49%を出資します。 これまでNTT東西から個別に借り受けていた光ファイバー設備等を共同利用することで、1回線あたりの収容効率を高め、コスト削減と収益性の向上を狙います。これはKDDIと実施している基地局の共同運用(5G JAPAN)の固定回線版とも言える取り組みであり、宮川氏は「投資効率を追求する」と述べました。
経営体制の刷新とPayPayの今後
また、次世代への経営継承として、4月1日付での役員人事も説明されました。宮川氏は留任しますが、創業期から事業を支えてきた今井康之会長や藤原和彦CFOらが退任・顧問就任し、執行体制の大幅な若返りが図られます。藤原CFOは最後の登壇となり、「営業利益1兆円を創出できる会社に成長した」と22年間の任期を振り返りました。


質疑応答では、PayPayの上場準備についても問われましたが、宮川氏は「順調だが、現段階でお話できることはない」と述べるにとどめました。

ソフトバンクは、通信事業における「質の追求」への転換と、AI・データセンターという「次世代インフラ」への投資を同時に進めています。短期的な契約数競争から脱却し、中長期的な企業価値向上へ舵を切った決算と言えるでしょう。



