京セラと東北大学、シリコン光回路上に直接集積可能な光アイソレータ技術を開発 〜レーザーアニール技術を活用し、AIデータセンター向けの光電融合チップ高度集積化に貢献〜

京セラ株式会社と国立大学法人東北大学 電気通信研究所は、シリコン光回路上に直接集積可能な光アイソレータ技術を共同開発しました。局所熱処理手法である「レーザーアニール」プロセスを用いることで、周囲の配線や電極へ熱的影響を及ぼさずに光アイソレータを作製・集積することに成功しました。同手法を用いてシリコン光回路上へ光アイソレータを集積する技術は世界初となります。本成果をまとめた論文は、2026年9月3日付で米国電気電子学会(IEEE)発行の学術誌「IEEE Access」に掲載されました。

【開発の背景と課題】

近年、生成AIの普及に伴い世界のデータ通信量は急速に増加しています。通信の高速化および省電力化を実現する技術として、シリコン基板上に光回路を形成する「シリコンフォトニクス」の活用が進んでいます。特に、光回路と電子回路を同一パッケージに集積して電気伝送距離を短縮し、消費電力や信号損失を抑えるCPO(Co-Packaged Optics)の開発が世界規模で加速しています。

高度に集積された光回路では、内部で発生する反射光(戻り光)がレーザー光源に流入し通信品質を低下させることが課題となります。この戻り光を防止する光アイソレータは通信の安定化に不可欠であり、シリコン光回路上に直接作製するモノリシック集積技術が求められていました。

しかし、光アイソレータに用いられる「磁気光学ガーネット」の機能発現には約600℃以上の熱処理が必要となります。従来の炉を用いた全体加熱手法では、チップ上の金属電極や配線等の他素子が熱で破損するリスクがあり、磁気光学ガーネットが存在する領域のみを選択的に熱処理する技術の確立が課題とされていました。

【開発技術の特長】

京セラと東北大学は、熱処理が必要な領域のみに局所的にレーザー光を照射して加熱する「レーザーアニール」技術を導入し、この課題を解決しました。開発した技術の主な特長は以下の通りです。

1. 局所加熱による他素子への影響削減 磁気光学ガーネットが成膜された約700 μm四方の回路領域に対し、近赤外波長帯のレーザー光を照射します。照射領域のみが選択的に加熱されて結晶化し、必要な光学特性が発現します。チップ全体を加熱する従来の手法と異なり、周辺の光回路や金属電極への熱的影響を大幅に削減できます。

2. シリコン光回路上での動作実証 本技術を用いて光の干渉を利用した構造のデバイスを試作し、実証実験を行いました。光通信波長域において、進行方向の光(順方向伝搬)と戻り光(逆方向伝搬)の出力を比較した結果、13.6 dBのアイソレーション比を確認しました。これにより、光源に向かう戻り光を約20分の1に低減できることを実証しました。電子顕微鏡による観察でも、シリコン導波路上で良好に結晶化していることが確認されています。

【論文情報】

  • 掲載誌:IEEE Access(DOI: 10.1109/ACCESS.2026.3729586)
  • 論文タイトル:Monolithic Magneto-Optical Mach–Zehnder Isolator Using Laser-Annealed Iron Garnet on a Silicon Waveguide
  • 著者:Tomoya Sugita, Reona Motoji, Yuki Yoshihara, Dan Maeda, Hiroki Yamamoto, Hibiki Miyashita, Kazushi Ishiyama, Taichi Goto

【今後の展望】

京セラと東北大学は今後、本技術の実用化に向けてさらなる低損失化・高効率化を進めるとともに、量産化に向けた生産性の向上を目指します。両者は引き続き連携を進め、AIデータセンターをはじめとする高速・低消費電力な情報通信基盤の構築に貢献していく方針です。

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