「もはや買い物の場を超えたインフラ」高齢化率36%超の団地をコンビニが救う?ローソン・KDDI・URが挑むオールドニュータウン再生計画

2026年8月4日、東京都日野市の高幡台団地において、世代を超えて誰もが安心して楽しく暮らせる街づくり構想「ハッピーローソンタウン」の集合住宅型1号店となる「ハッピーローソンタウン日野高幡台店」がオープンし。同日午前には店舗前で関係者によるオープンセレモニーが開催され、日野市の古賀壮志市長、独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)の高藤喜史理事、株式会社ローソンの竹増貞信代表取締役社長、KDDI株式会社の村元伸弥執行役員らが出席し、それぞれの取り組みや次世代の郊外団地モデルに対する期待を表明しました。

日野市・古賀市長「もはや買い物の場を超えた社会のインフラ」

日野市、ローソン、KDDIは2026年6月に包括連携協定を締結しており、今回の店舗オープンに伴いUR都市機構を加えた共同の連携体制が本格的に稼働しました。

式典の挨拶に立った古賀壮志市長は、1971年頃に入居が開始された高幡台団地の歴史に触れ、「人口減少の中で、地域課題や市民の利便性、移動環境、コミュニティの維持、防災の環境等をどのように守っていくかが大きな課題」と地域の現状を説明しました。

古賀市長は、協定への期待について「お買い物だけでなく、地域コミュニティの維持や防災、地域公共交通にも貢献し、お住まいの皆様がこれからもこの地域に愛着を持って安心に生活していけるような店舗の核となることを祈ります。先日KDDI様の本社を視察し、先端技術を体験した。地域住民や従業員が心地よく生活するための思いが随所に生かされていた。もはやこうしたコンビニは、お買い物をするためだけのものではなく、関係者が力を結集して育てていくべき社会のインフラであると改めて感じた。日野市としても応援しながら一緒に歩んでいく決意です」と語っていた。

UR都市機構・高藤理事「ミクストコミュニティと緩やかなつながりを」

全国で約1400の団地、約69万戸のUR賃貸住宅を管理しているUR都市機構。高藤喜史理事は、団地建物の高経年化や居住者の高齢化が進む中、2014年度(平成26年度)から取り組んでいる「地域医療福祉拠点化」と、今年度から開始した「こどもつながるUR」の施策を掛け合わせる方針を示しました。

高藤理事は「少子高齢化への対応や地域包括ケアシステム構築を目的とし、多世代が生き生きと暮らし続けられる『ミクストコミュニティ』の実現を目指している」と述べた上で、同機構が設立70年を機に発表した事業メッセージ「緩やかに、くらしつながる。」の理念について次のように強調しました。

さらに 「URが承継してきた価値は、緩やかな空間と人と人のつながりです。このレガシーを生かし、誰もが安心して自分らしく毎日を過ごせる居場所となることを目指します。本店舗を核として、自治会や日野市、ローソン、KDDIの皆様と連携し、便利で安心、暮らしやすい住環境を提供するとともに、持続可能な郊外型団地のモデル構築を目指したい」と述べていました。

ローソン・竹増社長「人が集まり笑顔になる、こたつのような店に」

ローソンの竹増貞信社長は、社会課題の解決と企業の成長を同時に達成する目標として「ハッピーローソンタウン構想」の原点を語っています。

竹増社長は、50年以上が経過した郊外団地の「ゆったりとした日当たりの良い贅沢な作り」に着目し、利便性の提供により若者世代も含めた地域再創生が可能であるという仮説を提示。 「スマートシティのような大きな都市構想は我々にはできませんが、1点、地域に密着したお部屋・お店を作ることで、みんなが住みたくなるオールドニュータウンの再活性化に取り組みたい。店内に設けた畳敷きの小上がりのイートインスペースは、高齢者から幼稚園児までみんながリラックスできるスペース。とりあえずローソンに行こうと集まって、笑顔で賑やかになる。ローソンが『こたつ』のような役割となり、みんなが足を突っ込んで温まりに来るようなお店をイメージしている」と説明しています。

さらに、調剤薬局や食品スーパー「コモディイイダ」との生鮮食品連携、KDDIの先端テクノロジーによる相談窓口などの複合的機能を強調。短期的な経済の合致をビジネスとして注視しつつも、「まずはやってみるという仮説を優先し、成功するまで続けていくのがローソン」と意気込みを語りました。

また、先日の熊本地方での被災地支援活動に触れ、「平時は便利で快適で温かく、有事には本当に安心できるお店。それがハッピーローソンタウンの目指す姿」と、災害時の生活インフラとしての存在意義を重ね合わせました。

KDDI・村元本部長「テクノロジーと温もりが合わさった新たな支援」

KDDIの村元伸弥執行役員(パーソナルグロース事業本部長)は、集合住宅型の団地における今回の取り組みを「初めての街づくりのモデルケース」と位置づけました。

村元本部長は「KDDIは通信のつながる力とテクノロジーを利用し、地域が安心安全に生活できる街づくりに貢献する」と述べ、導入される各種サービスについて「ビデオ通話デリバリーやよろず相談などは、自宅にいながらお店や専門家、行政とリモートで直接つながることができる。テクノロジーと温もりが合わさった、新しい暮らしやすさの提供になる。また、少子高齢化社会においてロボティクスの力は必然。10月から高幡台団地内での自動配送ロボットの実証実験を開始する。ゆくゆくは人型ロボットが導入される未来も、そう遠くないと考えている。地域の皆様が笑顔で溢れ、いつでもほっとできる場所になるよう、引き続き取り組んでまいりたい」と説明しました。

住民を支える日常サービスと災害対策インフラの全容

本日オープンした店舗は、売場面積約272平方メートル(調剤薬局含む)。野菜、精肉、冷凍魚などの生鮮品約90品目を毎日輸送し販売します。9月1日には店内に「クオール薬局」が開業し、処方箋の受付やOTC医薬品、介護用品の販売、在宅医療相談を開始する予定です。さらにJR東日本の多機能ロッカー「マルチエキューブ」を通じた受取サービス「駅チョク便」も導入されました。

店内にはオンライン相談窓口「Ponta よろず相談所」を設置し、金融や通信の相談のほか、アバターを介した日野市役所職員とのオンライン市民相談を可能にしています。 買い物困難者を支援するため、11月末まで専用タブレットを使った「ビデオ通話デリバリーサービス」の実証実験を実施します。顔馴染みの店員と会話しながら注文した商品を即日自宅へ届ける仕組みです。

災害対策機能としては、屋根上の太陽光パネル、業務用蓄電池、衛星通信「Starlink」を整備し、停電時にもフリーWi-Fiやスマートフォンの充電サービスを提供します。さらに、災害時時には、地域の避難拠点としての機能も備えています。

ローソンは、今回お披露目された「ハッピーローソンタウン」を2030年までに全国100箇所へ展開する目標を掲げています。官民と公的機関が手を携えた「持続可能な郊外団地モデル」が、これからのオールドニュータウン再生の足がかりとなるか、今後の成果が注視されます。

この記事を書いた人

海外取材の合間に世界を旅しながら記事執筆を続けるノマド系テクニカルライター。雑誌・週刊アスキーの編集記者を経て独立。IT、特に通信業界やスマートフォンなどのモバイル系のテクノロジーを中心に取材・執筆活動を続けています。

TechBreezeをフォローする
Tech
シェアする
TechBreezeをフォローする
タイトルとURLをコピーしました