8月3日、日本マイクロソフトは「2027年度 メディア懇親会」を開催し、自社の最新のAI戦略およびセキュリティに関する取り組みを報道機関向けに発表した。プレゼンテーションでは、日本市場における生成AIの普及状況の報告に加え、AIエージェントを活用した業務プロセスの自動化、中堅中小企業での導入事例、AIを活用した新たなセキュリティソリューション「Project Perception」の提供開始について説明が行われた。
*日本マイクロソフトの年度の始まり(会計年度の期首)は7月1日。米国の本国マイクロソフトと同様に、7月1日から翌年6月30日までを1つの会計年度としている
日本市場におけるAI普及の加速とマイクロソフトの投資
代表取締役社長の津坂美樹氏は、日本の生成AI利用率が世界平均の3倍を超えるペースで増加していると報告。さらに、日経225企業の約90%がAIエージェントを活用しており、調査対象企業の100%が市民開発によるカスタムエージェントを導入しているという実態を示した。

津坂氏は、マイクロソフトが向こう数年間で日本に対して1兆6000億円の投資を行うことを説明し、AIインフラの増強、官民連携によるセキュリティと研究の支援、そして人材育成の拡大に注力する方針を示した。
また、AIの展開においてはインテリジェンスとトラストの両輪が不可欠であると述べた。組織内に蓄積された知識を競争優位性に変える基盤として、仕事のコンテキストを理解する「Work IQ」、ビジネスデータ基盤の「Fabric IQ」、エージェント向けナレッジ基盤の「Foundry IQ」、ウェブ情報の「Web IQ」から構成される「Microsoft IQ」を定義した。これを安全に活用するためのプラットフォームとして、Agent 365、Foundry、Microsoft Defenderによる環境構築を推進している。










AIエージェントとの協働と自律型「デジタル社員」の実証実験
執行役員 常務 クラウド & AIソリューション事業本部長の岡嵜禎氏は、AIを企業の変革を加速する原動力と位置づけ、従来の「人的資本」にAIの推論力である「トークン資本」を組み合わせた「継続的な学習ループ」の重要性を指摘した。

AIモデルが進化し普及する中、大量のコンテキストの処理やAIを前提としたシステムへの移行が企業の課題となっている。同社はこれに対し、AIエージェントが複数工程の作業を実行するソリューションを提案。デモでは、「Copilot Cowork」を用いて、会議内容に基づくタスク整理、記事のドラフト作成、関係者への会議設定などを一連の流れで自動実行する様子が示された。また、「Microsoft Scout」による経費精算の自動化プロセスも紹介された。







さらに現在実証実験中である、組織の一員として振る舞う自律型AIエージェント(デジタル社員)のデモも公開された。デモでは「ケビン」という名のエージェントが独自のIDを持ち、人間の従業員と同僚間でチャットを通じ、自律的にスケジュール調整と会議設定を行う様子が示された。これにより、AIは単なる対話システムから、人とチームを組んで協働する存在へシフトしていることが強調された。













中堅中小企業でのAI活用事例とエコシステム
執行役員 常務 コーポレートソリューション事業本部長の小林治郎氏は、中堅中小企業におけるAI活用の現状と事例について説明。労働力不足や低い生産性といった課題がある一方で、中小企業には意思決定の速さや現場との近さ、独自のノウハウがあるとし、AI活用によってこれらの強みをより活かせると述べた。

具体的な導入事例として、英文メールのドラフト作成により月25時間の作業を削減した法律事務所(Vanguard Lawyers Tokyo)や、ベテラン社員の暗黙知をAIエージェントに学習させることで若手の育成期間を3年短縮した青山財産ネットワークス金沢の事例が紹介された。また、IT運用を標準化しサーバー数を削減したNGBや、需要予測AIを内製化し予測誤差の低減と時間短縮を達成したグローバルエンジニアリングの事例も挙げられた。
マイクロソフトは全国数千のパートナーと連携し、全国27拠点に展開する「Microsoft Base」や、実践学習機会である「Copilot Cup」を通じて、中堅中小企業のAI導入を支援するエコシステムを構築している。



AIエージェントを活用したセキュリティ運用「Project Perception」
最後に、技術統括室 チーフセキュリティオフィサーの河野省二氏が、AIエージェントを活用したセキュリティソリューション「Project Perception」を発表。パブリックプレビューは発表日である8月3日より開始しているとのこと。

セキュリティ運用における人材不足や環境の複雑化といった課題に対し、従来のシステムではあらかじめ決められた手順での対応しかできなかった。これに対し「Project Perception」は、AIエージェントが全体状況をリアルタイムで把握・理解する「知覚力(Perception)」を活用する。
システムは、攻撃シミュレーションを行う「Red チームエージェント」、検知・分類を行う「Blue チームエージェント」、修復・防御強化を行う「Green チームエージェント」という複数のAIモデルを組み合わせたマルチエージェントで構成される。これらが連携して継続的に学習し適応型の管理を行うことで、コスト効率が高く高精度な防御を24時間体制で実現する。





