楽天グループは2026年7月7日、報道機関向けに「楽天市場」におけるAI活用に関する説明会を開催した。説明会では、消費者向けの購買体験向上と、出店店舗向けの業務支援の両面におけるAI機能の導入状況と成果が報告された。
■ 楽天グループ全体のAI戦略
同社は社内で「AI-nization」という方針を掲げ、全社的なAIの活用を推進している。オペレーション効率、マーケティング効率、クライアント効率をそれぞれ20%向上させる「トリプル20」を目標として設定している。現在、11のサービスでAIエージェントを導入済みであり、50以上のサービスで導入を計画している。楽天IDを基盤とした70以上のサービスと、年間3兆回を超えるインタラクションデータが同社の強みとなっている。



■ ユーザー向けのAI機能
消費者向けの機能について、2025年12月に提供を開始した「楽天市場 AIコンシェルジュ」は、実店舗における接客のような対話型の体験を目指している。導入の結果、従来の検索機能と比較して購入決定までの時間が約40〜41%短縮され、平均注文金額も約17%向上した。 最近の機能追加により、複数商品の仕様やレビューを表形式で比較する機能や、商品の詳細ページに遷移せずに特徴やレビュー要約を確認できる機能が実装された。また、セール期間中には用途が定まっていない相談が増加する傾向にあり、AI側から質問を提示することでユーザーのニーズを引き出しているという。 2025年11月に提供を開始した「ディスカバリーレコメンデーション」は、ユーザーの行動データに基づき、SNSのような操作感で偶発的な商品との出会いを提供する。今後はライブコマースの導入など、エンターテインメント性を強化する方針である。



■ 出店店舗向けの支援ツール
出店店舗向けのシステム「Rakuten AI for RMS」については、コマース&マーケティングテクノロジー統括部の山川祐介氏が説明した。2024年3月の提供開始以降、商品説明文の自動生成、画像加工、問い合わせ回答の作成などを支援しており、現在約半数の店舗が機能を活用している。 2026年4月30日には新たに「データ分析エージェント」の提供を開始した。AIとの対話を通じて店舗ごとの売上データを分析できる機能で、利用店舗の72.9%がデータの深掘りを行っている。



■ 出店店舗における活用事例
実際の活用事例として、「プチギフト momo-fuku」専務の木澤典子氏が登壇した。同店では、マナーなどの専門知識が必要となる問い合わせの対応文作成にAIを活用し、月間約67時間かかっていた業務を約20時間に削減した。商品登録においてもAIを活用し、取扱商品数を約1000点から1万点以上に拡大させている。画像加工機能については、他社のAIツールでは商品の柄や比率が変わってしまう事例があったが、楽天のAIは現物の特徴を正確に維持したまま背景を加工できる点を評価した。

■ 質疑応答
質疑応答において、外部の汎用AIからの検索流入に関する質問に対し、高間氏は具体的な数値は非公開としつつ「流入は増加傾向にあり、ビジネスチャンスとして活用していく」と回答した。また、店舗独自の専門知識がAIに学習されることで他店との差別化が難しくなる懸念について、山川氏と高間氏は「情報の切り分けや提供範囲については、店舗と相談しながら設計を行っていく」と述べた。


