WWDC 2026
米アップルは、年次開発者会議「WWDC 2026」をカリフォルニア州クパチーノのApple Parkで開催し、自社のオペレーティングシステムに関する最新のアップデートを発表しました。今年の発表は主に、「日常的なプラットフォームの応答性と操作性の向上」「子供向けの安全性(Trust and Safety)の拡充」、そして「Apple Intelligenceの飛躍的な進化と新アーキテクチャ」の3点に重点が置かれました。

■ iOS 27およびmacOS Golden Gateにおける基本性能の向上
次期Mac向けOSの名称は「macOS Golden Gate」と発表されました。アップルは新機能の追加だけでなく、既存の機能の改良と基本性能の最適化に注力しています。システムのメモリ使用量、CPU稼働率、ネットワーク操作などを根本から見直すことで、大幅な高速化を実現しました。
具体的には、iPhoneおよびiPadでのアプリ起動速度が最大30%向上し、写真の読み込みが最大70%速くなったほか、AirDropによるファイル転送速度も最大80%高速化されました。さらに、iPadから外部ドライブへのファイル閲覧や転送は最大5倍に高速化され、MacのFinderと同等の速度を実現しています。

また、最新機種向けに提供されていた高度なCPUスケジューラを旧モデルにも適用したことで、次期OSであるiOS 27はiPhone 11以降のモデルをサポートします。これにより、過去最大のユーザーベースに対して最新のOSが提供されることになります。
デザイン面では、「Liquid Glass」デザインの基盤を改良し、背景の複雑なコンテンツを効果的に拡散させることで可視性を高めました。ユーザーは設定からLiquid Glassの透過度を調整できるようになっています。検索機能も再構築され、インデックス作成が安定・効率化されたことで、Spotlightやメールアプリでの検索精度と速度が向上しています。

■ 児童の安全性(Trust and Safety)の強化
保護者が子供のデバイス利用を管理するための新機能が追加されました。第一歩として「子供用アカウント(Child Account)」の作成が推奨されており、これにより成人向けウェブサイトのブロックや年齢制限が自動的に適用されます。

新機能として、アプリのダウンロードを承認する既存の「Ask to Buy」に加え、新たにウェブサイトの閲覧を管理する「Ask to Browse」が導入されました。子供が新しいウェブサイトを閲覧する際、保護者に許可を求める通知が届き、Safariを通じて各デバイス間でシームレスに機能します。この機能は13歳未満のユーザーではデフォルトで有効化されます。
さらに、「Time Allowances(利用時間枠)」機能が追加され、エンターテインメント、ゲーム、ソーシャルメディアといったカテゴリごとに利用時間を設定できるようになりました。加えて、学校の時間帯に合わせて特定のアプリアクセスを制限するスケジュール機能も導入されています。

通信の安全性(Communication Safety)もアップデートされ、これまでのヌード画像の検出に加え、暴力的で残酷なコンテンツを含む画像や動画を子供が閲覧する前に介入してブロックする機能が追加されました。
■ 次世代Apple IntelligenceとGoogle「Gemini」との連携
独自のAIシステム「Apple Intelligence」の次世代アップデートが発表されました。アップルは今回、Googleとの協業を発表し、Googleの「Gemini」ファミリーの技術を活用した次世代のApple Foundation modelsを構築したことを明らかにしました。このモデルはデバイス上(オンデバイス)とサーバー上(Private Cloud Compute)の両方で実行されます。

プライバシー保護は最優先されており、Private Cloud Computeを利用する際もユーザーのデータがアップルや第三者に保存・アクセスされることはなく、外部の専門家による検証が可能な設計となっています。
■ 「Siri AI」の導入と視覚的インテリジェンス
Apple Intelligenceを基盤として、音声アシスタントSiriは「Siri AI」として全面的に刷新されました。Siri AIは、ユーザーの個人的な文脈の理解、画面上の情報の認識、画像理解、および幅広い世界知識へのアクセスを統合しています。

Siri AIは文脈を踏まえた会話が可能になり、新たに専用のSiriアプリも提供されます。これにより、ユーザーは過去のSiriとの会話履歴を振り返り、iPhone、iPad、Macをまたいで会話を継続できます。システム全体での音声入力(ディクテーション)の精度も向上しています。
さらに、iPhoneのカメラ機能と統合された「Visual Intelligence(視覚的インテリジェンス)」が導入されました。新しい「Siriモード」を利用すると、ユーザーはカメラを向けた対象についてSiriから情報を得ることができます。例えば、食事の栄養素を確認したり、レストランの伝票を読み取ってApple Cashで割り勘にしたりすることが可能です。この機能はMacやiPad、Apple Vision Proでも利用できます。

Siri AIは文章作成や編集もサポートします。ユーザーが自然言語で指示を出すと文書の草案を作成し、送信相手との普段のやり取りに基づいた適切な文体に調整します。また、システム全体で機能する自動校正機能も搭載されており、サードパーティ製アプリ上での入力時にも動作します。
■ 各種アプリへのAI統合と新機能
Apple Intelligenceは標準アプリにも組み込まれています。
Safariでは、開いているタブの内容を分析し、関連するトピックごとに自動で整理する機能が追加されました。また、「Notify Me」機能により、特定のウェブページの更新を自動監視させ、変更があった際に通知を受け取ることが可能になりました。

パスワードアプリでは、推測されやすい弱いパスワードや漏洩したパスワードを検出し、AIがユーザーに代わってウェブサイトをナビゲートし、強力なパスワードに自動で更新する機能が搭載されました。
Homeアプリでは、多数のアクセサリからの通知を単一の活動として集約する機能が追加されました。さらに、接続された防犯カメラの録画クリップをAIが分析して要約し、録画された内容に基づいて映像を検索する機能も提供されます。

写真(Photos)アプリでは、高度な画像編集機能が追加されました。不要な被写体を除去する「Cleanup」機能のアップグレードや、画像の外側を生成して被写体の周囲を拡張する「Extend」機能が利用できます。さらに、撮影後の写真の構図を調整できる「Spatial Reframing」機能が発表されました。これはオンデバイスの空間モデルとPrivate Cloud Computeの画像生成を組み合わせたもので、視点を変更した際に生じる空白部分をAIが補完します。
このほか、自然言語で指示を出すだけで複雑な自動化プロセスを作成できる「Shortcuts」の改良や、多様なスタイルの画像を生成できる「Image Playground」の刷新なども発表されました。

■ 提供時期と一部地域での制限事項
これらのOSアップデートは、開発者向けのベータ版が即日提供され、来月にはパブリックベータ版が公開されます。一般ユーザーへの正式リリースは今秋を予定しています。

Apple Intelligenceの一部機能(画像生成など)については、サーバーのモデルに依存するため1日の利用制限が設けられており、iCloud+のサブスクリプション登録者にはより多くの利用枠が提供されます。

また、規制要件により、EU圏内ではiOSおよびiPadOSにおけるSiri AIの提供が初期段階では見送られます。中国市場においても、要件を満たすまでの間、Siri AIを含むApple Intelligenceの新機能は提供されないことが明らかにされました。
ティム・クックCEOは基調講演の最後において、「世界最高の製品を創り出し、人々の生活を豊かにする体験を届けることは常に我々の指針である」と述べました。



