楽天モバイルは2026年5月26日、同社の提供するコミュニケーションアプリ「Rakuten Link」に関するメディア向け技術勉強会を開催した。公式発表では通話品質の向上や、楽天エコシステムとの連携強化による「スーパーアプリ」化への取り組みが説明されたが、後半の質疑応答では、ユーザーが直面する課題や不足する機能についてメディアから厳しい質問が相次ぐ展開となった。

【発表内容:Rakuten Linkの進化とエコシステム連携】 勉強会は担当者によるプレゼンテーションから開始された。Rakuten Linkのこれまでの進化として、2023年8月のデスクトップ版提供、2024年の法人向け「Rakuten Link Office」の提供、同年10月の楽天AI標準搭載などが紹介された。さらに今後の展開として、2026年7月頃より「my 楽天モバイル」アプリの全機能がRakuten Link内に実装され、契約管理やデータ利用量の確認などがアプリ内で完結するようになることが発表された。


続いて、楽天エコシステムとの連携状況が説明された。ホームタブやサーチ機能を通じて、楽天市場や楽天トラベルなどグループ内サービスへの送客を強化しているという。現在、Rakuten Linkから各種サービスへの送客回数は月間5000万回を突破しており、公式アカウント機能を通じて店舗とユーザーの接点を創出するマーケティングチャネルとしての役割も拡大しているとした。

【発表内容:通話品質の向上】 通話品質に関して、2026年4月20日より順次実施されたアップデートによる改善状況が報告された。音声暗号化技術の改善により、移動中の通話品質を示す指標がRakuten Link同士の通話で26%、他社スマホや固定電話宛てで16%向上したとしている。また、ノイズキャンセリング機能の強化も図られ、会場では実際の通話を想定したノイズ除去のデモンストレーションが行われた。



【質疑応答:メディアからの指摘が相次ぐ】 プレゼンテーション後の質疑応答では、メディア陣から機能の実態や仕様の課題に対する指摘が集中し、厚い議論が交わされた。
まず、通話品質向上に関する技術的な詳細や指標についての質問に対し、楽天側は具体的なコーデックやビットレートの数値は非公開とした。総務省が定めるMOS値などの基準との比較についても明言は避けたが、「VoLTE標準電話アプリの通話と遜色ない品質であると自信を持っている」と回答。しかし、この品質向上が法人向けのRakuten Link Officeに適用される時期については「現在検討を進めている」とし、コンシューマー向けが先行している現状が明らかになった。
実際の通信環境に基づく品質への不満も提起された。楽天回線が入っている環境下でも通話の途切れや遅延が発生するという指摘に対し、楽天側は「移動中の基地局の狭間などで遅延が発生しそうな場合、アプリ内で制御する技術を入れている」と説明した。そのうえで、依然として問題が発生している状況を認識しており、ネットワークとアプリの両面で継続的な改善に取り組む姿勢を示した。
また、新たに追加されたノイズキャンセリング機能について、手動でのオン・オフの切り替えができない仕様への疑問も呈された。「周囲の状況をあえて相手に伝えたい場合に不便ではないか」との指摘に対し、楽天側は「至近距離での人の声を優先する仕様だが、端末を口元から離せば周囲の音も入るよう調整されている」と説明した。
エコシステム連携の強化に伴うユーザーインターフェース(UI)の変更についても懸念の声が上がった。各種サービスへの導線が増えたことで「本来の電話機能にアクセスしづらくなった」というユーザーの不満に対し、電話画面をデフォルトにする機能の提供予定を問われたが、楽天側は「現時点では検討段階であり、すぐの対応は難しい」と答えるにとどまった。
iOS版特有の仕様に関する問題も指摘された。海外利用時において、iOS版ではRakuten Linkで着信を受けられず標準の電話アプリに着信してしまうため、高額な着信料が発生するケースがある点について解決策を問われたが、楽天側は「Appleの仕様上の問題として認識しているが、現時点で回答できる解決策はない」とした。また、他社キャリアが標準採用を進めるRCS(Rich Communication Services)の相互接続への見解についても、「現時点で社内で決まっていることはない」と回答した。
質疑応答で最も厳しい追及を受けたのは、迷惑電話対策と着信拒否機能についてである。昨今、詐欺などの迷惑電話が社会問題化している中、Rakuten Linkアプリ内で直接着信拒否ができない仕様について理由を問う質問が出た。
現状、端末標準の着信拒否機能を利用するには「Rakuten Linkから一度ログアウトする必要がある」という煩雑な仕様になっており、迷惑SMSへの対策も未実装であることが確認された。サービスとして提供している「迷惑電話・SMS対策 by Whoscall」もRakuten Linkでは使用できない。
メディアからは「電話サービスとして最優先で対応すべき機能であるにもかかわらず、エコシステム連携などが優先されているのではないか」と改善を求められたが、楽天側は「要望は長年認識しているが現時点でお話しできる対応策はない」と回答し、具体的な解決時期の提示には至らなかった。
今回の勉強会において、楽天モバイルはRakuten Linkの品質向上と、楽天グループの各種サービスをつなぐ「スーパーアプリ」としての進化をアピールした。しかし、後半の質疑応答で浮き彫りになったように、基本機能である「電話」としての使い勝手や、迷惑電話対策といった安心・安全に関わる機能の拡充において、ユーザーの要請に十分に応えきれていない側面も残されている。エコシステムの拡大と通信インフラとしての機能性・信頼性向上をいかに両立させていくかが、同社の今後の課題と言えそうだ。


