なぜソフトバンクは10万円の「AIスマホ」を売るのか? ブレイン社CEOが語る“アプリ不要”のパラダイムシフト

ソフトバンクがAIスマートフォン「Natural AI Phone」を発売

ソフトバンクは2026年4月17日、「AIプロダクト発表会」を開催し、米国のAI開発スタートアップであるBrain Technologies Inc.(以下、ブレイン社)が開発したスマートフォン「Natural AI Phone」を同年4月24日に発売すると発表した。発売後1年間は、ソフトバンクが国内独占で販売する。

また同日より、各種生成AIサービスを簡単に体験できる新サービス「だれでもAI」の提供を開始。さらに、LDH JAPANと協力し、骨格推定技術と生成AIを活用したダンス上達支援アプリ「AI DANCE LAB Supported by SoftBank」を5月28日に提供開始することも発表された。本稿では、発表会での「Natural AI Phone」の概要説明、および質疑応答などについてレポートする。

Natural AI Phoneの概要

ソフトバンクのコンシューマ事業統括 プロダクト本部 本部長の足立吉明氏によるプレゼンテーションでは、「Natural AI Phone」の機能詳細が説明された。本端末は、ブレイン社が開発した独自のAIエージェント「Natural AI」を搭載しており、ユーザーの意図を理解してサポートや提案を行う。

最大の特徴は「ジェネレーティブインターフェース」と「アンダースタンディングシステム」である。従来のスマートフォンはユーザー自身が複数のアプリを切り替えて操作する前提であったが、「Natural AI」は表示されている画面情報を理解し、ユーザーが次にやりたいことを予測する。例えば、メッセージアプリで食事の誘いを受けた際、アプリを切り替えることなく、スケジュールの確認、飲食店の検索・予約、相手へのメッセージ送信までの一連の作業をAIがバックグラウンドで実行し、最適なインターフェースを自動生成して提示する。現在対応しているアプリはGoogle カレンダー、Google マップ、YouTube、LINE、食べログなどであり、今後拡大予定としている。

本体右側面には専用の「AIボタン」が搭載されており、ワンプッシュでAIを起動できる。アプリの操作中などにAIボタンを2回押すと、AIが画面上の画像やテキストを理解・記憶し、次のアクション提案に活用する。また、AIホーム画面「FocusSpace」では、旅行の計画など中長期的な目標を設定すると、必要な情報の検索や整理を自動で行い、目標達成までをサポートする機能が備わっている。

ユーザーデータの取り扱いについては、データはデバイス内および日本国内のクラウドに保存され、AIのモデル学習には利用されない設計を採用し、プライバシーに配慮していることが強調された。

ブレイン社CEOによるプレゼンテーション

ブレイン社の創業者兼CEOであるJerry(ジェリー)氏も登壇し、製品開発のビジョンを語った。同社は「誰もが直感的に使える新しいコンピューティング体験」の実現を目指し、2015年に米国で創業された企業である。ちなみに投資者のひとりにMCハマー氏もおり、今発表会では会場に姿を見せていた。

ジェリー氏は、現在のスマートフォンのアプリ・エコシステムは機能ごとにサイロ化されており、ユーザーがアプリに合わせて思考を分断しなければならないと指摘した。AIをOSのカーネルレベルから統合することで、ファイルやアプリといった既存の仕組みから脱却し、AIがユーザーの意図を直接受け取って横断的に処理する「AIネイティブ」なインターフェースへのパラダイムシフトが必要であると説明した。

質疑応答

発表会の後半に行われた報道陣との質疑応答では、端末の位置づけや戦略について質問が挙がった。

本端末のターゲット層について足立氏は、「AIエージェントを本格的に搭載した初の端末であり、まずは新しい技術に関心の高い層にメイン機として使っていただきたい」と回答。データ処理に伴うクラウド通信のコストについては、AIに関する処理コストはブレイン社が負担するビジネスモデルであり、ユーザーへの追加請求は発生しないと説明した。

開発の経緯およびアプリではなくハードウェアとして提供する理由について足立氏は、「日本のユーザーに必要なサービスやUI対応についてブレイン社と協議を重ねてきた」と説明した上で、「アプリの制限を取り払い、AIを中心に据えて意図を直接処理するためには、OSレベルでの組み込みが不可欠だった」と述べた。

他社のスマートフォンやOSプラットフォームに搭載されるAI機能との競合に関する質問には、「ジェネレーティブインターフェースと、ユーザーの行動から学習するアンダースタンディングシステムが差別化の要因になる。今後も他社に対抗できる独自のアップデートを継続していく」と回答した。

ブレイン社のジェリーCEOに対しては、協業相手にソフトバンクを選んだ理由が問われた。同氏は「ソフトバンクはAIのパイオニアであり、AIが中心になるという将来のビジョンが合致していたため」と答えた。また、日本市場での発表について「幼少期に日本のロボット技術や家電に触れた経験があり、テクノロジーに先進的で、全く新しい概念を導入するのに適した市場だと捉えている」と語った。

インターフェースにおいて音声入力よりも視覚(タッチスクリーン)を中心とした理由についてジェリー氏に質問が飛んだ。同氏は「人間は視覚的な動物であり、音声のような線形な会話では情報を順番に提示する必要があるが、二次元の画面であれば複数の選択肢を一度に把握し、瞬時に判断できる」と説明。タクシー配車を例に挙げ、地図上で車両の位置を一目で確認できる視覚インターフェースの優位性を述べた上で、今後は音声などのモダリティとの組み合わせも進化させていくとした。

「Natural AI Phone」の独自アーキテクチャの必要性について、ブレイン社の担当者は「従来のOSのようにユーザーがファイルやフォルダの階層を探しに行く仕組みは不自然である」と指摘。ユーザーの意図を受け取ったAIが自動でコンテキストを理解し、情報を提示する仕組みを実現するためには、アプリレベルではなくOSカーネルレベルでのアーキテクチャ変更が必須だったと語った。またデータ処理は、端末内のNPUを活用したローカル処理と、クラウド推論のハイブリッド方式を採用しており、低遅延や電力消費を考慮しながら処理を振り分けていると明かした。

端末の販売戦略について足立氏は、本体の一括価格が10万円近くなる点について「AIのレスポンス速度や将来のアップデートに耐えうるよう、RAM12GBなどの余裕を持たせたスペックを採用した」と説明。販売数は絞り、アーリーアダプターやイノベーターを対象としたチャレンジングな商品であると位置づけた。端末の開発体制はブレイン社が主体であり、ソフトバンクは日本向けの仕様要求や品質に関するフィードバックを行う形で連携したという。

最後に、AIの速い進化スピードとOSアップデートの兼ね合いについて足立氏は、「AIの進化速度に対応するためには、従来のキャリアが実施する長期間の検証プロセスでは追いつかない」と指摘。新しいAI機能を迅速に取り込めるよう、ブレイン社との連携手法を見直していると述べた。「セキュリティを含めたAndroid OSのバージョンアップと、Natural AIのアップデートのどちらを優先するかについては、状況を見ながら判断していく」と、AIネイティブ端末特有の運用上の課題についても言及した。

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