KDDI SUMMIT 2025 開催:次世代AI基盤とローソンDXを軸に最新ソリューションを公開
KDDIグループ最大級のビジネスイベント「KDDI SUMMIT 2025」が、2025年10月28日と10月29日の2日間にわたり、TAKANAWA GATEWAY Convention Centerで開催されている。本イベントでは、ネットワーク技術の進化とAI/ロボットを活用した法人向けソリューションを多数展示。展示会場は5つのゾーンに分かれ、約40の展示内容を紹介している。

次世代AIデータセンターとGPUクラウドサービス
主要な展示の一つとして、AI時代の計算資源を支える「大阪堺データセンター」の取り組みが紹介された。本AIデータセンターは、2025年4月に取得したシャープ堺工場跡地の、大規模な電力・冷却設備を再利用することで、従来のデータセンター構築に3年以上かかるところを半年以内での構築を可能としたところが注目のポイント。

このAIデータセンターは、水冷方式の一種である直接液体冷却(Direct Liquid Cooling)を導入し、NVIDIA GB200 NVL72を含む最新世代の高性能AIサーバーを稼働させる。これにより、高度な計算能力を安定して提供する。また、国内で運用されるデータセンターとしてソブリン性が確保され、企業の秘匿情報などの機密性の高いデータを安心して保管し、学習・推論に活用できる。

このAIデータセンターを活用した第1弾のサービスとして、GPUクラウドサービス「KDDI GPU Cloud」が紹介された。本サービスは、キャリアグレードのネットワーク環境下でNVIDIA GB200 NVL72を提供し、サーバーを1台単位からクラスタ単位までオンデマンドで利用可能である。これにより、初期投資不要でスモールスタートから大規模拡張まで柔軟に対応する。トライアル提供は2026年1月下旬から、サービス申込受付は2026年4月1日から開始される。

ローソンとの連携によるリテールDX推進
KDDIはローソンと連携し、AIやロボットを活用した店舗DXの実証に取り組んでいる。ローソンが掲げる「2030年度までに店舗オペレーション30%削減」の目標実現に向けた取り組みとして、主に以下の2つのソリューションが展示された。
- AI×ロボットによる欠品検知と品出し自動化: 2025年11月8日から「ローソン S KDDI高輪本社店」で実証を開始する。店内を巡回する自律走行ロボットに搭載した4Kカメラで商品棚の画像を撮影し、画像解析AIで欠品状況を自動で正確に検知する。欠品が確認された後、アームを搭載したロボットがバックルームから商品を搬送し、棚の奥への補充を行う品出し業務を自動化する。特に人手を要するお菓子類やインスタント食品などの作業効率化を目指す。
- AIグラスを活用した現場のスマートオペレーション: 2025年10月28日から12月26日までの期間、ローソン店舗でAIグラスを活用した業務効率化の実証を実施する。カメラやマイクが内蔵されたAIグラスを従業員が着用し、業務中の映像をAIが解析することで、作業内容や作業時間を詳細に可視化する。さらに、食品調理などの業務マニュアルをAIに登録することで、従業員はAIと対話しながら手順の確認や不明点の解決ができ、ハンズフリーでの作業支援を実現する。これにより、人材育成の負担軽減や業務精度の向上が期待される。




ネットワーク技術の進化とモビリティへの応用
ネットワーク関連では、エリア外でも通信を可能にするサービスや、大容量通信のエリアを拡張する技術が紹介された。
- au Starlink Direct: au 5G/4G LTEのエリア外である県外で利用できる衛星通信サービス。2025年9月時点で、対応機種にてテキストメッセージでの通信が可能であり、Android機種では写真・動画・電子ファイルの添付にも対応している。会場では、特別な端末を利用したX(旧Twitter)での動画再生やGoogle Mapの利用デモが行われ、衛星通信の現状が示された。
- ミリ波中継技術: 高速大容量通信が可能ながら遮蔽物に弱いミリ波(28GHz)の課題に対し、中継機を開発・活用することでエリアを拡張する。デモンストレーションでは、Netflixの動画コンテンツ(合計1.4GB)10話をミリ波中継機経由でダウンロードした場合、ミリ波端末で全話ダウンロード完了した時点で、サブ6端末がまだ6話目のダウンロード中と、ミリ波の高速性をアピール。また、ソニーのカメラで撮影した大容量の連写画像(約0.8GB/80枚)を高速アップロードするデモも実施された。中継機の導入は基地局建設と比較してコストを約4割削減できる見込みがある。
- モビリティ: 自動運転バスの車両も展示された。この車両にはカメラが搭載されており、遠隔監視拠点(地下2階の展示会場)へ通信を使って映像を配信し、遠隔監視を行うための取り組みが紹介された。






その他DXソリューション
中古車販売の現場におけるAI活用として、「KDDI AIデジタルプライスボード」が展示された。紙のプライスボードをデジタルデバイスに置き換え、遠隔での価格自動更新を可能にする。生成AIを活用して中古車の相場価格を算出し、設定金額との乖離を即座に検知する機能も持つ。本サービスは2025年10月20日に提供が開始されている。

KDDIは本イベントを通じて、AIとネットワーク、そしてパートナーとの共創を軸に、日本の産業競争力強化と社会課題の解決に貢献していく方針を示した。


