楽天モバイルは4月23日にプレスカンファレンスを開始し、米AST SpaceMobile社(以下AST)との連携による「Rakuten最強衛星サービス Powered by AST SpaceMobile」の進捗について発表しました。同社はこの取り組みを携帯業界の「アポロ計画」と位置付け、推進しています。
今回、楽天モバイルとASTは、2025年4月に日本国内で初めて低軌道衛星と市販スマートフォン同士の直接通信試験によるビデオ通話に成功しました。試験は、福島県内に設置した楽天モバイルのゲートウェイ地球局からASTの低軌道衛星「BlueBird Block 1」に電波を発信、衛星を介して市販スマートフォンが受信する形で行われました。福島県と東京都の間で、通話アプリを使用し市販スマートフォン同士のビデオ通話を実現。これは宇宙からのモバイル・ブロードバンド・ネットワークと市販スマートフォン端末との通信において、日本国内初の成功事例(2025年4月時点、AST調べ) となります。
楽天グループ株式会社 代表取締役会長兼社長で楽天モバイル株式会社 代表取締役会長の三木谷浩史氏は、米国での試験成功に続き日本でもこの画期的な技術を証明できたこと、大変喜ばしいと述べています。災害大国である日本では、気候変動の影響で災害が激甚化していると言及。能登半島地震の例を挙げ、災害時には通信が最も求められるニーズの一つであったと強調しました。本サービスは、災害時における連絡手段として重要な役割を果たす可能性がある とのことです。また、技術的に証明できたこと、今後は衛星を上げていくだけの段階になったと説明しています。
「Rakuten最強衛星サービス」の主な特徴は、既存の携帯サービス用周波数帯を使用することです。これにより、ほぼ全てのLTE対応スマートフォンで利用が可能となる見込み。また、使用する衛星が非常に大きい点も特徴で、競合他社の衛星に比べて約36倍、223平方メートルの巨大な衛星を約50基、低軌道に打ち上げる計画。この大きさにより、衛星から電波を強く送信、携帯電話側のパワーが弱くてもブロードバンド接続を実現できるとしています。サービス内容は、通話やテキストメッセージに加え、YouTubeなどの動画視聴、ソーシャルメディア、ビデオ会議といったブロードバンド通信に対応する予定。
このサービスにより、現在の国土面積カバー率約70%を100%に拡大することを目指します。基地局建設が難しい山岳地帯や離島、領海内、海上、飛行機内など、これまでのモバイル通信圏外だったエリアをカバーすることが期待されます。災害時には地上インフラが被災した場合でも衛星を介して通信が可能となる見込みです。楽天モバイル契約者以外の方も利用できるようにしたいという考えも示されました。法人顧客の安否確認ニーズや政府関係のニーズ、IoTデバイスとの通信による災害予防や外獣被害削減、ドローンを活用したサービス展開など、多様な用途への活用も視野に入っています。三木谷会長は「携帯市場の民主化」を掲げる楽天モバイルとして、すべての方がモバイル通信を使用可能になる世界を目指したいと述べています。
国内サービスの開始は、2026年第4四半期を目指しています。今後はサービス実現に向け、ASTと連携し試験を進める方針。将来的に第2弾、第3弾の衛星サービス提供も計画しています。
料金についてはまだ検討段階です。楽天モバイルは2020年3月にASTと戦略的パートナーシップを締結、日本国内での独占的な使用権や技術協力を進めてきました。楽天モバイルはASTに約15%出資しています。ASTはAT&T、Verizon、Vodafoneなど世界中の約40社以上の携帯電話事業者と提携、提携事業者のユーザー数は合計30億人に達するとのことです。楽天モバイルは戦略的パートナーのリーダーシップ的な役割を果たしているとしています。


