YouTubeが明かす次世代レコメンデーション:2025年は「個」に最適化、LLMでより深く理解

YouTubeは、公式チャンネル「Creator Insider」にて、「The YouTube Algorithms in 2025 — Explained!」と題した動画を公開し、同社の成長と発見担当プロダクトチームを率いるトッド氏と、YouTubeクリエイターリエゾンのレネー氏が、将来のレコメンデーションシステムの仕組みについて詳細な解説を行った。本稿では、その内容をまとめる。

動画冒頭で、レネー氏は、YouTubeのレコメンデーションシステムは、個々の視聴者を中心に設計されている点を強調した。クリエイターが「なぜ自分の動画がプッシュされないのか」と疑問に思うことが多いが、実際には、システムは個々の視聴者に対して「何を見たいか」を予測し、最適なコンテンツを提示する「プル型」の仕組みであるという。トッド氏は、ホームページを開いた瞬間、YouTubeは個々の視聴者(例:レネー氏)を認識し、その日の満足度を高めるコンテンツを提供しようとすると説明した。

従来の集計された指標(クリック率や視聴時間など)に注目するクリエイターが多い現状に対し、トッド氏は、システムはこれらのデータを入力として使用するものの、最終的には個々の視聴者ごとに動画をランク付けすると述べた。同氏は、映画を選ぶ際に友人に意見を聞く行為に例え、YouTubeのレコメンデーションは「口コミの自動化」であると表現し、視聴傾向が類似したユーザーの視聴履歴に基づいて、個々のユーザーに最適な動画を推薦する仕組みであることを明らかにした。

また、動画が公開されてから時間が経過した後でも、関連性の高い動画が再びレコメンドされる可能性についても言及された。ニュースや著名なクリエイターの言及などがきっかけとなり、過去の動画が新たな視聴者層にリーチする例が紹介された。さらに、時間帯やデバイスの種類もレコメンデーションに影響を与える要素であるとし、朝にニュース、夜にコメディといった視聴者の傾向を学習し、異なるコンテキストで異なるコンテンツを提示する試みが行われていることが明かされた。

クリエイターが最適化のために注力すべき単一の指標は存在しないとされ、コンテンツの種類や視聴環境によって各要素の重要度が変動することが説明された。例えば、音楽ビデオにおいては視聴時間よりも「いいね」のような満足度を示す指標が重要となる場合がある。YouTubeは、単にエンゲージメントの最大化を目指すのではなく、視聴者がコンテンツから得られる価値を重視しており、視聴者へのアンケート調査などを通じて得られる満足度シグナルをランキングに反映させることで、長期的な視聴者の維持を目指している。

絶対的な指標の数値(CTRや視聴時間)にとらわれず、自身のチャンネルや動画内での相対的なパフォーマンスの変化に注目し、改善を図ることがクリエイターにとってより重要であるとされた。視聴回数やインプレッション数は、レコメンデーションシステムのあらゆる要素を包括しているため、これらの数値の推移を注視することが重要であると強調された。

多言語対応については、異なる言語の音声トラック(吹き替え)をアップロードするクリエイターに対し、システムがそれらの動画を認識し、異なる言語の視聴者にもリーチできるよう機能が追加されていることが説明された。また、各言語トラックごとにパフォーマンスを学習するフィードバックループが構築されており、翻訳されたタイトルや説明文の重要性、そしてチャンネルの視聴時間の80%以上を占める言語でカタログを充実させることの有効性が示唆された。

チャンネル全体の視聴回数の増減は自然な現象であり、一時的な減少に過度に心配する必要はないとされた。長期的な視点で分析し、視聴者からのフィードバックやGoogleトレンドなどを参考に、コンテンツの進化や新たなトピックへの挑戦を続けることが推奨された。また、登録者タブの視聴状況は、アルゴリズムの影響を受けないコアな視聴者の反応を把握する上で貴重な情報源となることが紹介された。

今後の展開として、大規模言語モデル(LLM)をレコメンデーションに導入する試みが進められていることが発表された。これにより、動画コンテンツの内容や視聴者の理解がより深く、よりニュアンスのあるものになることが期待されている。例えば、料理動画の場合、レシピの暗記だけでなく、食材や調理法、表現方法、感情までも理解できるようになり、個々の視聴者の状況や好みに合わせた、よりパーソナライズされたレコメンデーションが可能になるという。トッド氏は、これを「レシピを読み上げるだけの料理人」から「基礎を理解し、状況に応じて柔軟に対応できる熟練のシェフ」への進化に例え、今後のレコメンデーションの高度化に期待を示した。

今回の解説は、YouTubeがより個々の視聴者のニーズに応え、長期的な価値を提供することを目指している姿勢を示すものと言えるだろう。クリエイターは、アルゴリズムの動向を理解し、変化に対応しながら、質の高いコンテンツ制作に注力することが、今後のYouTubeでの成功に繋がるだろう。

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