スペイン・バルセロナで開催されたMWC25において、Japan Orbicのダニー・アダモポウロス社長が日本向けのプレスに対してグループインタビューを開催。世界的な建設機械・鉱業機械メーカーであるCaterpillar(CAT)とのグローバルなライセンスパートナーシップ締結を発表した。さらに、この提携に基づき開発されるCATブランドのタフネススマートフォン全製品を、日本の製造会社であるJEMS(ジェムズ)が国内で製造することも明らかにした。
アダモポウロス社長は冒頭、「Caterpillarとの提携を発表できることを大変誇りに思います」と述べ、OrbicがCATブランドの製品をグローバルに展開していく計画を強調した。特に注目すべきは、すべてのCaterpillarデバイスが日本国内で製造されるという点だ。
製造を担当するJEMSは、40年以上のものづくり経験と、20年以上にわたる携帯端末の製造実績を持つ。アダモポウロス社長は、JEMSの製造工程のビデオを紹介しながら、これまで中国やインドなど海外で製造されていた製品との違いを説明。「作り方、プロセスの流れが全く違う」と述べ、JEMSの丁寧な手作業に加え、高度な自動化が両立されている点を評価した。また、トレーサビリティが確保されていることや、不良が早期に発見・対応できるリアルタイムな進捗管理システムも、日本での製造を選択した重要な理由として挙げた。
Caterpillarとの製品開発においては、デザインや仕様の詰めを両社が密に連携して行っているという。Caterpillarが市場のニーズや製品に求める要件を提示し、Orbicがそれを設計に落とし込む協業体制を構築している。特に、高い耐久性や防水性といったCATブランドの核となる要素については、これまでOrbicが培ってきたノウハウとは異なる、より高いレベルの要求に応えるべく、詳細な仕様を詰めているとのことだ。ミルスペックへの準拠や、水中での利用、落下時の耐久性などが具体的な検討項目として挙げられた。
「なぜメイドインジャパンなのか、なぜJEMSなのか」という問いに対し、アダモポウロス社長は、JEMSが持つ正確な設計・製造能力、丁寧な仕事、手抜きのなさといった日本人の特性に加え、顧客やユーザーへの配慮といったソフト面も評価した。また、JEMS自身も「日本で高品質なものづくりができるのは自分たちだけだ」という強い自信を持っていると語った。JEMSの技術力として、顧客の要求への柔軟な対応力、設計から製造、アフターセールスまでをワンストップで提供できる体制、変化への強い対応力、そして最高品質の製品を提供できることが強調された。
現在開発中のCATブランドのスマートフォンは、単なる頑丈さだけでなく、温度測定が可能なサーマルカメラや、プッシュツートーク(PTT)機能など、現場での利用を想定した多様な機能が搭載される予定だ。Verizon向けの端末「Speed X」についても、JEMSとの協力体制で開発が進められていることが明かされた。
アダモポウロス社長は、「弱いOrbicというブランドよりも、Caterpillarという強力なブランドを借りることで、より明確にやりたいことを打ち出せる」と語り、今回の提携への期待感を示した。また、日本で製造された製品が世界155カ国で販売される見込みであり、「日本でこれほど多くの端末を製造し、海外に輸出するのは初めてではないか。日本人としてもメーカーとしても非常に有意義だ」と述べ、日本のものづくりが世界に認められる機会となることへの喜びを語った。
製品の発売日や詳細なスペックについては、まだ最終決定には至っていないため、現時点での発表は見送られた。しかし、アダモポウロス社長は近いうちに日本の素晴らしいものづくりを皆様にお見せしたい」と述べ、今後の情報公開に期待を持たせた。